ブログトップ

みつばちと日々のこと

archae88.exblog.jp

カテゴリ:農薬のこと( 1 )

無農薬のはちみつ

野菜や果物を作る農業で農薬を使うように、養蜂業でも実は農薬を使います。
使う目的も、<減収穫の要因となる害虫を殺す>という意味では一緒で、養蜂業の場合、みつばちの体に付くダニ(*)の殺虫に農薬を使います。


a0247891_6553712.jpg

上)腰のあたりにくっついている丸い赤茶色の物体がダニです



また、細菌病の予防に抗生物質も使います。

これらの薬物投与は、養蜂業では普通に行われていることですが、一般的にはあまり知られていません。
みつばちのダニ被害や病気を防ぎ、効率的に養蜂生産するうえで役に立つ一方、主に次に挙げる2点の弊害が知られています。

1つ目は、商品であるはちみつやみつろう(はちの巣)に薬物が混入・残留してしまう可能性が挙げられます。特に、ダニを殺虫する農薬の多くは脂溶性であり、みつろうの中に染み込んで残留するようです。
はちみつへの混入は、一旦、溜まっている汚染蜜を全部捨てるなどして投与時期をずらせば回避も可能なようですが、みつろうは一度残留したら、もうその巣は汚染されたままです。
はちみつは主に食べ物として、みつろうはハンドクリームなどの化粧品として人体へ接触します。その際、体内に取り込まれてしまう可能性があります。
これらの薬物は、食品衛生法で残留基準値が厳しく定められてもいます。

農薬が人体にもたらす影響は、急性中毒の危険性はよく知られていますが、次世代に渡って影響が懸念される慢性中毒も近年問題視されているようです。
農薬による慢性中毒には、神経障害、精神障害、甲状腺機能障害、小児発達障害など数々の症状が知られているようですが、疫学的研究では、『どの農薬にどれぐらい晒されたらこうなる』という正確な把握は難しいようです。
このことが、『無農薬が良いに決まっているけど農薬をつかうと具体的にどうなるかはよく知らない』といった一般的な空気のようなものに繋がっているように思えます。さまざまな利権もあるのでしょうし。

2つ目は、薬物を投与することで、みつばち本来の病気に対する耐性を弱めてしまうことです。みつろう内に残留した農薬は、長期に渡ってこれを助長することが懸念されています。
さらに、ダニ自身が農薬に対する耐性をつけてしまい、農薬の過剰投与という悪循環を招いています。

しかしながら、養蜂を生業とする場合、安定的に大量飼育を行う必要があり、多くの養蜂業者でこれらの薬物を使わざるを得ないのが現状です。

ダニの駆除は、チモール(ハーブ)や蟻酸といった非農薬系合成天然物の使用も試されていますが、農薬に比べると効果は低く、価格も高価で手間もかかるため、すぐに農薬に置き換わるようなものではないようです。

私たちarchaeの養蜂は、これらの一切の薬物を使用していません。チモールや蟻酸も、みつばちに悪影響が無いわけではないので使用しません。

正直、養蜂業での農薬や抗生物質が人体にどれほど影響があるか、僕ははっきり知りませんし言えません。
しかし、虫に対する薬物の効き目はよく目にします。
養蜂業以外でも仕事や趣味で虫とかかわる機会の多い僕は、昆虫調査の際、サンプル採取のため虫を薬殺します。
したたかな外来種でも、薬物の前ではあっさり死にます。普段自然界では起こらないような薬物曝露は、虫からしたら基本毒です。
直接なり間接なり大なり小なり短期間なり長期間なり、虫への農薬の影響は必ず悪いほうへあると思います。
また、普段薬物と無縁なやつほど影響はわかりやすいと思います。
つまり、普段農薬のような薬物との接点のあまりない虫は死ぬなどして分かりやすいが、種々の薬物と付き合って生活している人へはわかりにくい方向で悪影響があるのではないか、と勝手に考えているわけです。
あるいは、虫やほかの生き物に悪影響を及ぼし、その恩恵を受けている人に回りまわって悪影響が出るとか。
いずれにしても、薬物は使わない方向でいこうと決めました。

なにより、薬物など使わない素のみつばちが素で集めてきたはちみつが一番おいしいはず。そう思います。


みつばちに寄生するダニは、まず発生を最小限に抑えるよう努力しています。とっっても大変ですが、もともとのみつばちの抵抗力を第一に考え、さらに飼育環境を衛生的に保つことで、細菌病をはじめとする病気にも負けないよう、みつばち達をバックアップしています。
とても手間のかかることですが、おいしくて安全なはちみつや原料を提供するうえで、欠かすことのできない仕事だと信じて、挑戦しています。
良いものは手間がかかります。多く採れなくても、良いものが採れればと思います(食い意地)。

* このダニ、和名をミツバチヘギイタダニといって、みつばちの体表に取り付き、ときに走り回り、みつばちの体液を吸って生活しています。主にみつばちが蛹のときに寄生被害が大きく、蛹の体液を吸ってダニが繁殖します。うかうかしていると爆発的に増えます。寄生された巣は、はちの翅がちぢれて飛べなくなったり、体が小さくなってしまったりするとされ、放っておけばやがてその巣は全滅してしまいます。被害は世界的に深刻です。


参考文献
『動物医薬品の適正使用に努めてください!』 北部家畜保険衛生所ホームページ、2013年7月
『これからのヘギイタダニ対策』 俵養蜂場ライブラリートピックスⅩ、2013年1月
『養蜂家向け! 養蜂マニュアル』 みつばち協議会、2011年3月
『農薬による人体の慢性障害 -次世代への影響も含めて-』 松島松翠、2004年3月

[PR]
by archae88 | 2013-08-02 02:51 | 農薬のこと | Comments(0)