だいぶ時間が過ぎてしまいましたが、今年の4月に台湾に行ってきました。
ずっと調べているアリの仲間のサンプリング*が主な目的なのと、もう一つ。
琉球列島の並びにあって、ものすごく興味深い生物相なのはわかりきっていながらも、たった『他国』というだけで思うように行けていない台湾。
琉球島兄弟の末っ子にして最大の面積と膨大な多様性を誇るこの島を見ずにして、琉球の生きものの成り立ちの理解は深められない!
ということで、昆虫に限らずとにかくいろんな台湾の生きものを見つけて観察することも大きな目当てとして掲げていました。
そもそも観光じゃなく生きもの調査だけが目的で海外に出たのは今回が初めてなので、未体験のわくわくが止まらないまま当日を迎えたのでした。。!

同上。この場所では沖縄の在来ヤシのクロツグのノリで生えていた。
綺麗なクモ。

はいおいしい!

沖縄のオオシロカネグモに似たクモ。
屋台では大きなグァバのカット実に甘酸っぱい梅の粉をつけたものがよく売られていて、これがまたやたらとおいしい!沖縄に粉を買って帰ったけど、再現できる大きなグァバが近所で見当たらないさー。。

屋台巡りも楽しい!このブドウ飴もおいしー!

おいしいのでとにかく食べまくるのよ。。
スーパーの鮮魚コーナーで、沖縄の川にもいるテラピア(アフリカ原産)らしい魚を見つけた。テラピアは汚水に対する適応力が高く、沖縄では街中のドブにもいるから心情的に食用として気が向かないけど、少なくともきれいな川にいるものはとてもおいしい(これを子どもだった僕に調理して教えてくれた父には感謝)。もともと沖縄へも食用として持ち込まれた魚。

うんおいしい!もう食い倒れの旅に変更したくなるぐらい。
街中の解放的な食堂だと足元までチョコチョコやってくる鳥(標識の支柱の頂点)。

木の一部になりきっているバッタの仲間。自然度の高い地域では、林内の低木から施設の植木鉢の植物まで見られた。

同上。こんなのは沖縄にいませんねー!たまりませんねー!
スジアオゴミムシの仲間?

でっかいサシガメ!感動!

ヤエヤママルヤスデの仲間。見た目やいかたは八重山のと同じ感じ。

ヤマンギ=沖縄のイワサキカレハという蛾の幼虫に似た雰囲気の毛虫。幸い!大きいものは目につかなかった(毛虫が苦手なんです)。
同行していた台湾人の研究者の方に、台湾ではアリのことを『マーイ―』と発音すると教えていただきました。
現地調査のとき、同行者とある程度ばらけてそれぞれ個々で採集することも多く、今回も、僕は単独でアリを探して林床に座り込んで、地面やトレーの中の土をじっと眺めて時間を過ごしていました。
ポイントによっては、トレッキングなどの利用で一般の人がすぐ横を通ることも少なくなく、「何してるの?((たぶん))」と尋ねられることもちょいちょいありました。
そんなとき、台湾語が全く話せない僕は「アイ サーチフォー マーイ―!」とトレーの土を指さすことで乗り切っていました笑。
そしたらだいたいの方が「まあ!」となって、みんな「アリを見てるの!?大変だね!頑張ってね!((たぶん))」と優しいのです。たぶん。
そうやって何時間か経ち、いまいち成果があがらない状況(目当てのグループのアリが採れない、採れるアリが代わり映えしない)が続くと集中力が低下してきがちです。
あるとき、思わず癒されたすごいことがありました。
土をふるって、トレーをのぞき込んで、本日見慣れたアリがまたいるのを見て、
『これは、、さっき採ったマーイ―か?いや初めてのやつか。』
なんて、切れの悪い判断が先行したことがありました。
それからほどなくして、ずっと起動していた登山用GPSアプリが、なんと、たまたま
《あなたのその『まぁいいか』は本当にまぁいいですか?》
と言ったのです!(一言一句はうろ覚えですが、遭難防止の趣旨と取れるそのような言葉を確かに喋りました!もともと様々な声かけを自動でしてくれるアプリだけど、これは初めて!)
初めて聞いたその音声に本当にハッとなって、
『確かに。何ならアリでもない別の虫かもしれない。何もかも不慣れなこの土地で本気でアリ採らないでどうする!』
とひとり気を取り直してアリ探しを続けました。
何年も一緒に山歩きをしたから、ついに通じ合った?笑

数日間泊まった宿の周辺。湿潤でありながら風通しの良い素晴らしい環境。

印象的だったのは、乾燥に強いソテツが高湿度を好むコケやシダの多い森で元気に生えていたこと。
僕はと言えばこんな感じでうろうろ。

カワトンボの仲間。こんなに白く粉吹くのはむしろ日本本土の種に似ている。
今回、何気に感動したのがこのカエル。沖縄のやんばるの渓流に限って生息しているナミエガエルに近い仲間と思われる。この仲間が台湾にいるのは知っていて、見てみたいと思っていた。やはり同じような山地の渓流部の河道内にいた。
その幼体と思われる個体。ひし形の瞳!台湾で会えるなんて嬉しい!
渓流には今回のメインのターゲットであるアシナガアリの仲間もいた!沖縄ならサワアシナガアリがいそうな環境。

八重山にもいるアイフィンガーガエルの仲間。同じ感じで林内の低木上で目につく。

素敵なカラーリングのハナムグリの仲間。沖縄と似たような外見の種に親近感を覚えたかと思えば、急にこういう熱帯アジア感を醸す外国っぽい種がいるのも懐の深い台湾ならでは。期待を裏切らない嬉しさ!
コケにくっつく蛾の幼虫。どこにいるかわかりますか?

ここです。沖縄でも似た雰囲気の蛾の幼虫がシダについているのを見たことがあるけど、同じ仲間なのかな。

何かのサナギを襲っているハシリハリアリの仲間。沖縄のより大型で黒い。
サルもいました。とてもおとなしく、採集中、こっちが気にしていなければあちらも気にせず毛づくろいしたりみんなで列になって移動したりしている。人に対して期待も恐れもないといった感じ。おそらく意図的に、人側からの無用な干渉はしていないのだろう。良い関係のように思えた。
赤味の強いアシナガバチの仲間。
宿のベランダの様子。夜はカーテンを開けて電気をつけておいて、そのままライトトラップにしていた。
他の昆虫を捕らえたアブの仲間。
湿潤な林内の樹幹にはたくさんのランが着生している。
そういった森では着生ランやシダの仲間の目につきぶりがすごい。かつての沖縄は、特に着生ランはこんな感じでたくさん生えていたかもしれない。
沖縄にもいるアカアシホソバッタとモリバッタを足した感じのバッタ。

クロギリスの一種!沖縄や屋久島にも近い仲間がいて、いかにも琉球を思わせる種。いるのねー台湾にも。
Reduviusと思われるサシガメの幼虫。沖縄のチャイロサシガメの幼虫によく似ている。
ヒキガエルの仲間。うっすら見たいと思っていたヘリグロヒキガエルではないみたい。
カジカガエルの仲間?顔つきはそんななんだけど。
八重山にいるクロイワオオケマイマイに似たカタツムリ。

青ハブを見に森林公園へ。ここの竹林には結構いるような書かれ方。

ちゃんといた!なんともきれいなヘビだこと!竹林内はほぼ緑一色なので、裏面も緑色のこの青ハブは周りの環境によく溶け込んでいた。

灯火にて。高級感のある蛾。実に多様な蛾が飛んでくる!良さがピンとこない無知さがつらい。
沖縄にもいるトラガモドキの仲間にも似た蛾。

基本、宿には寝るだけに帰ってくる。それにしては贅沢で立派な場所だったなあ。
寝る前に採った虫やそのデータを机で整理する。『月のしらべと陽のひびき』**を聴きながら。なんかそんな気分。

大きな木にウロが開いていた。冷静に努めたけど、良い虫がすごくいそうで興奮冷めやらぬまま潜ってしまった。
ハチやらヘビやらがいて危ないかもなのでもっと慎重にしないと。

なんでこんなにおいしいのか。店主さん教えてくれ。

慣れた手つきでおいしいものを揚げていく!
10日間に及ぶ今回の台湾調査では、いただいたサンプルも含めて、おおざっぱにですが全部で77種ぐらいのアリを確認することができました!
なかなかの種数ですが、今回同行させていただいていた研究者の方々の対象が主に甲虫であり、その調査範囲で僕がアリを探している状況だったので、アリを主眼で場所を選んだわけではありませんでした。
調査エリアも比較的標高の高いところばかりで、平地ではほとんど調査を行いませんでした。
そういった状況からすると、アリ目線でもっと細かなポイント選択や地点によって労力のかけ具合を加減して調査していたら、さらに平地でもじっくりと調査をしていたら、より多くの種数が採れていたと思います。
台湾って、想像以上にアリ影が濃くて、改めてすごいと思いました。
これはもう、何回も通うしかありませんね。
どんなアリに会えるのか、楽しみすぎます!
最後になりましたが、皆さま、良いお年をお迎えください。
来年もアルカエの昆虫活動をどうぞよろしくお願いします!
*大学機関の関係者として許可を受けて、採集禁止種以外の種のうち研究に必要な分類群だけを採集しました。
**エフエム福岡の制作した古代中国と現代日本を舞台にしたラジオドラマ。とても好きな話で、初めて聴いたとき、車内で手に持った大好物のにんにくマヨたこが楊枝に刺さったまま全く進まない状況で聴き入ってしまった(咀嚼音で聴こえが鈍る)。その後製作された舞台も見に行ったし、ラジオドラマも定期的に聴いている。
それともう一点、大事なことを忘れていました。台湾と言えば、僕は小学生の頃から、台湾出身の大女優ジョーイ・ウォン(王 祖賢)が大好きなので、今回、随所で『彼女昔ここに来たことあるかも』妄想でときめいていました。宿で睡眠時間を削って出演映画を2本観ました。もちろん同行者の誰にも言いませんでした。幸せでした笑。