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アルカエの日々のこと

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無農薬のはちみつ

野菜や果物を作る農業で農薬を使うように、養蜂業でも実は農薬を使います。
使う目的も、<減収穫の要因となる病害虫を防除する>という意味では一緒で、養蜂業の場合、みつばちの体に付くダニ(*)の殺虫に農薬を使います。


無農薬のはちみつ_a0247891_6553712.jpg


腰のあたりにくっついている丸い赤茶色の物体がダニです!
最初、すごい生き物だとあきれて感動したものです



また、細菌病の予防にと抗生物質も使います。

これらの薬物投与は、養蜂業では普通に行われていることですが、一般的にはあまり知られていません。
そういう僕も養蜂を始めてから知りました。ダニ?農薬?
そして、業界に足をつっこんでいると、いろいろな事情も見聞きするようになりました。
概ね以下のようなところです。


~これらの薬は、みつばちのダニ被害や病気を防ぎ、効率的に養蜂業を行ううえで役に立つ一方、主に次に挙げる2点が業界でも懸念されている。

1. 商品であるはちみつやみつろう(はちの巣)に薬が混入・残留してしまう可能性がある
特にダニを殺虫する農薬の多くは脂溶性で、みつろうの中に染み込んだら残留してしまう。
はちみつへの混入は、一旦、溜まっている混入蜜を全部捨てるなどして投与時期をずらせば回避も可能だが、みつろうは一度残留したらもうその巣は汚染されたままとなる。
はちみつは主に食べ物として、みつろうはハンドクリームなどの化粧品として人体へ接触する機会があり、その際、体内に取り込まれてしまう可能性が指摘されている。

(見るとこれらの薬は食品衛生法で残留基準値が厳しく定められていました)

農薬が人体にもたらす影響は、よく知られている急性中毒の危険性のほか、次世代に渡って影響が懸念される慢性中毒も近年問題視されている。
農薬による慢性中毒には、神経障害、精神障害、甲状腺機能障害、小児発達障害など数々の症状が知られているが、疫学的研究では、『人がどの農薬にどれぐらい晒されたらこうなる』という正確な把握は難しい。

2. 薬を投与することで、みつばち本来の病気に対する耐性を弱めてしまう可能性がある
みつろう内に残留した農薬は、長期に渡ってこれを助長することが懸念されている。
さらに、ダニ自身が農薬に対する耐性をつけてしまい、農薬の過剰投与という悪循環を招いている。
しかしながら、養蜂を生業とする場合、安定的に大量飼養を行う必要があり、多くの養蜂業者でこれらの薬物を使わざるを得ないのが現状である。
ダニの駆除は、チモール(ハーブ)や蟻酸といった非農薬の合成天然物の使用も試されているが、農薬に比べると効果は低く、価格も高価で手間もかかるため、すぐに農薬に置き換わるようなものではない。


~といったもの。
正直、養蜂業での農薬や抗生物質が人体にどれほど影響があるか、僕にはわかりません。もちろん、良いことはないでしょう。

仕事柄、虫に対する薬の効き目はよく目にします。
養蜂業以外でも、仕事や趣味で虫とかかわる機会の多い僕は、昆虫調査の際、サンプル採取のため虫を薬殺します。
例えしたたかな外来昆虫でも、化学物質を自らの武器として具える昆虫でも、毒となった薬物の前ではあっさり死にます。
普段過ごしている自然界で経験しないような、性質や量の薬に晒されれば、虫からすれば死にいたる毒以外のなんでもないのです。

では、身体が小さくて耐性のない虫は死ぬなどして分かりやすいけど、普段から種々の薬物と付き合って生活している人へはどうか。
わかりません。
ただ、わかりにくい方向で悪影響があるのではないか、と僕は勝手に考えています。
みつばちに薬を使っても人間は大丈夫!と明らかにされた研究も知りませんし、いずれにしても、養蜂するなら薬は使わない方向でいこうと、最初に決めました。

それに、薬を使っていない素のみつばちたちが集めてきたはちみつこそが、素のはちみつの味がしそうで一番おいしそうだと思いました。

そういったわけで、私たちarchaeの養蜂は、これらの薬物を最初から一切使用していません。チモールや蟻酸も、みつばちにダメージがあるので使用しません。

みつばちに寄生するダニは、まず発生を最小限に抑えるように努力しています。とっっても大変ですが、もともとのみつばちの抵抗力を第一に考えて、さらに飼育環境を衛生的に保つことに努めて、細菌病などの病気にも負けないようみつばち達をバックアップするつもりで飼育しています。

手間はかかりますが、おいしくて安全なはちみつやみつろうを提供しようというなら必要な仕事だと信じて、挑戦しています。
良いものは手間がかかります。多く採れなくても、自分たちが食べておいしいものが採れればと思います(食い意地)。

*このダニ、和名をミツバチヘギイタダニといって、みつばちの体表に取り付き、ときに走り回り、みつばちの体液を吸って生活しています。主にみつばちが蛹のときに寄生の被害が大きく、蛹の体液を吸ってダニが繁殖します。うかうかしていると爆発的に増えます。寄生された巣のはちは、翅がちぢれて飛べなくなったり、体が小さくなってしまったりして、放っておけばやがてその巣は全滅の可能性が高いです。
しかしすごいやつで、みつばちの体についている分にはじつに動きは滑らか縦横無尽。しかし地表に落下するとちょっと動けるルンバ程度に機動力は低下する。


参考
『動物医薬品の適正使用に努めてください!』 北部家畜保険衛生所ホームページ、2013年7月
『これからのヘギイタダニ対策』 俵養蜂場ライブラリートピックスⅩ、2013年1月
『養蜂家向け! 養蜂マニュアル』 みつばち協議会、2011年3月
『農薬による人体の慢性障害 -次世代への影響も含めて-』 松島松翠、2004年3月


by archae88 | 2013-08-02 02:51 | ●はちみつのこと | Comments(0)
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