今回の冬のはちみつは、
フカノキという樹木の花から採れたはちみつです。

学名を
Schefflera octophylla (シェフレラ・オクトフィラ)
と言います。
和名をフカノキ、沖縄の方言ではアサグラなどと呼びます。
背の高い樹ですが、よく見ると葉が人の掌と指のように付いていて、
学名のとおり、octo(ラテン語で8)+phylla(葉)=8葉
8~10枚の葉がつきます。

白く小さな細かい花がたくさん咲きます。
この花から、ミツバチたちは甘くてほろ苦い蜜を集めます。
遠目からはぼわっと白く咲いてるし、
この苦みからは想像できないけれど、
花の一つ一つはとてもかわいらしい形をしています。


ウコギ科に属する常緑高木で、
九州南部から沖縄、東南アジアにかけて分布しています。
僕は、特にこのフカノキに思い入れがありました。
沖縄の在来植物だからです。
しかも、採れるはちみつがやみつきになるおいしさときてる…!
採りたいけど、どこに巣箱をもっていけば採れるのか?
在来植物なら在来の森に行けばいい。古くからある沖縄の森へ。
僕たちが選んだのは、国頭の森でした。
沖縄島の北端に位置する国頭村・大宜味村・東村。
この3村は、それより南の地域とST(塩屋-平良)ラインという線で
区切ることができ、このラインより北は深い森がまとまって残り、
ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネ、リュウキュウヤマガメなど、
世界でもここにしかいない生き物が生息しています。
そういう、沖縄本来の森の味を、味わいたいと思いました。
(やんばるに巣箱設置する場合の悪影響についてまとめました→
◆)
ちょっと大げさかもしれませんが、沖縄で生れ育った僕が、
みつばちをとおして沖縄の在来植物の魅力を人に伝え、
それらを育む沖縄の自然の良さを伝えられたら、
養蜂をしているかいがある、と思いました。
そういった想いも込めて、”Ryukyuensis selection”と名付けました。
生き物の学名(*)の中で、ラテン語化された産地名に
付ける”ensis”を琉球に配し、
Ryukyu(琉球)+ensis(産のもの) = 琉球産のはちみつ、
ということで、
『琉球に自生する植物から採れたこの土地ならではのはちみつ』
という意味を込めました。
ちなみに、僕が見つけた
クモも、ryukyuensis と名がつきました。
学名
Tricalamus ryukyuensis=
Tricalamus:トリカラムスというグループの、
ryukyuensis:琉球に産するもの、という意味です。
ところで、フカノキのはちみつは何で苦いんでしょう?
何かほかの植食者からの自己防衛手段なのか。
見た感じ、棘があるわけではないですし、葉が特に硬いわけでもない。
何のための苦みなのか、僕たちも観察中です。
ぜひ、そんなことも思ってみたりして味わってもらえたらと思います。
※ 学名
研究者が新種の生き物の論文を発表する時に、その生き物につけられる唯一無二の名前のこと。主にラテン語で表記され、国際命名規約によって規定がある。ホモ・サピエンス(
Homo sapiens)とはヒトの学名である。