今年の冬の終わり、とあるウチナーンチュに出会いました。
2月、沖縄本島中部のうるま市。
プロのマンゴー農家でもある養蜂家の先輩に紹介して頂き、その方と初めて対面しました。
僕が先輩に、『マンゴーの花粉交配(※)に挑戦してみたいので中部地区でマンゴーを栽培している農家さんを紹介してくれませんか?』
と頼み込んだのがきっかけでした。
この方、じゅんさんといいます。
マンゴー以外にも、素人の僕からすれば見たことも聞いたこともないような果樹や野菜も育てています。
何だかよくわからない植物たちだけと、なんだろう、みんな良く生えてる!
植物のさわり方が違うなと、最初に思いました。荒いように見えてそうじゃなく、ママがベイビーを抱き寄せるように丁度良い。
生きた植物をずっと相手にしてきたんだろうなって、思いました。
実際、何十もの植物を育てているこの道の玄人なんですが、話をしていくうちに、タダ者ではない、むしろ植物に対して少し変態であることがわかってきました(笑)。
果樹や野菜、というより植物のことを、この人は信じています。
人よりも多く、太陽を仰いで月の下を歩き、土を嗅ぎ水を撫でているうちに期待と妄想が育ちすぎたのか?
しかし、手をかけた分だけ生き物が期待に応えることを知ってしまっている。
生きものは、こちらが見た分だけ見ごたえが出てきます。
生きもの飼育が好きな僕もよく思うことです。
手をかけて管理し、その生きものにとって少しでもベストな状態に近づけることで、本来の美しさや持ち味を発揮します。
熱帯魚なども、手をかけた分だけ良い発色をし、ひれは元気にピンとなり、魚もまんざらでもなさそうに水の中からこっちを見ます。
そんな経験あるのではないでしょうか?
肉食性の昆虫も、ちゃんと飼育していると、与えた獲物にがしっとしがみつき、くりっとしたお目目のまま食べつくしたかと思えば、ひっそり「ウフフ…」って感じで物陰で休んでいます。
もちろんその種に合った『手のかけ方』が必要で、環境だけベストにキープし、観察はできるだけしない方がいいのが良い手のかけ方なやつもいます。
植物なんて、反応が動物よりは遅い分、よりはっきりと『応え』が出るのではないでしょうか。
僕なんかがうかがい知れるのはここまでですが、この人はその先を見ているに違いない。
こんな人が作るものは、それはきっと美味しいだろう。
じゅんさんは無農薬でマンゴーを育てていました。肥料も、拾ってきた落ち葉をまく程度だそうです…。
「農薬は使わんでもなるよ?屋根だけで育ててたこともあるよ。肥料もいらない。」
じゅんさんは平然と言いますが、どの発言もインパクト大でした。
それだけ、僕はマンゴーのことを誤解していたみたいです。
でも、肝心なのは、無農薬とか肥料を使わないとかそういったことではなくて。
じゅんさんは、なんともグッとくる考えを持っていました。
じゅんさんのすごいところに、というか、僕が常々尊敬できる人間とは、「素直な人」です。
いいものはいい。悪いことをしたと思うならごめんなさい。それがほしけりゃそれください。ありがとう。
本当は歳も体裁も関係ないはずです。
型にはまらず、良いと思うところは取り入れる。
味も体にも、良いものを作ることに関して、じゅんさんは素直だなーと、感じます。
いらないものは使わない、ただし、沖縄でこういった植物を栽培する時点でもう自然ではない、だから必要な管理は人間がきちんとして、その種に出せる本来のちからを引き出す。
野生状態と近代農業の技術の融合を、じゅんさんは楽しみながら実践しているようです。
ところで、マンゴーは、その実の赤を深くさせるために実を紐で枝ごと吊り上げて陽に当てるのが常套ですが、じゅんさんはかつてはそれさえもやっていなかったそうです。
以前、森の中にある農園を管理していた頃に育てていたという、吊っていないマンゴーの写真を見せてくれたことがあります。
マンゴーは手のかかる果樹だと聞きました。味と同じくらい、もしかしたら味よりも厳しく見た目が大事だからです。
だから、ハウス栽培が基本であり、吊り上げるし、見た目を損ねる害虫を大量の農薬で徹底的に叩きます。
無農薬で、マンゴーの栽培ってできるんですね?
吊らなくても、こんなに立派な実を付けるんだ。
写真を手に「マンゴーは木の実だった…」と当たり前のことに密かに驚き、妙に感心しながら緑の宙に浮かんでいる惑星のようなマンゴーたちに見とれました。
その美しさと、見慣れない光景、だけどそれがしっくりとくるある種の異様さに、唸ったことをよく覚えています。
そんなじゅんさんのマンゴーの花粉交配を、アルカエの蜜蜂たちが任されました。

マンゴーの花

緑の粒が、マンゴーの実のはじまり
ミツバチたちも、とっても頑張っていましたよ。
無農薬のマンゴーで花粉交配をやらせていただけたことは本当に幸運でした。
蜂たちが少しでも死なずに働けるほうがいいですもんね。今後、無農薬農家さん限定かな?
そして、この度、そのマンゴーたちが食べ頃を迎えましたよーーーー!!
ある時、じゅんさんが
「たけるー、結局最後は人の愛情がつくるんじゃないか~」
と言っていました。
だはず。
だからこんな味なんだはず。ほんとに美味しいんですよこのマンゴー。
ぜひ、食べてほしい。
じゅんさんと会えたご縁に感謝。これからが楽しみです。
※
マンゴーも植物なので、あの、美味しい立派な実をつけるためには、その元になる花の授粉『花粉交配』が必要になる。
近代農業においては通常、人の手ではなく、虫の手(脚)で行われる。人の手ではあまる膨大な花の数も、ひっきりなしに花に訪れる習性を持つミツバチが何千匹もいれば、すばやく確実に、しかもむらなく授粉が行われる。
この習性を利用し、養蜂家がマンゴー、イチゴ、カボチャ農家などに花粉交配用のミツバチを販売、貸し出しを行う商いがある。
◆アルカエは、この販売ミツバチの末路を重く受け止め、沖縄島内で貸出のみを行っています。
ちなみに、マンゴーでは、ハエによる花粉交配もまだ行われています。しかし、安定した着果率や衛生面のイメージ、管理面のコスパなどから、ミツバチによる受粉が浸透してきています。冬の間、マンゴーハウスの近辺がくさくなるのはそのためです。