先日、沖縄本島のとなりにある渡嘉敷島へ虫採りに行ってきました。
ここ数年かかりっきりの、ガマアシナガアリの仲間のアリのサンプリングが目的です。

渡嘉敷港。那覇の泊港からフェリーで1時間ちょっとで着く近さ。

島のあちこちで目につくギーマの花は、おっさんをも「かわいー!」と少女にさせるかわいい花。

もうヤマモモの実がなってた!食べすぎました。
たった1泊の調査だったのですが、サンプリングが早々に完了したので、島全体を流しながらアリの観察をしました。
途中、戦争時の集団自決の跡地を歩きました。思いをはせると、胸が苦しくてしょうがない。安らかに眠れるわけがない。アリなんぞ探している私は、精一杯生きるほかにない。

トカシキオオサワガニ。日本最大のサワガニで渡嘉敷島の固有種。サワガニ類は各島で固有となっているものが多い。
立ち寄った森の中で、土手に作られたキムラグモやトタテグモの仲間の巣(*)を何気なく眺めていた時、今回の渡嘉敷島調査で、一番おどろいた生きものに出会いました!

こちらは現地で普通に見られたキムラグモ類の巣(巣穴の扉から脚を覗かせて、獲物が通りがかるのを待っている)。
キムラグモ類をメインにいくつもの巣穴が見られ、改変の少ない良い目の森なんだろうなーなんて眺めていたら、オキナワトタテグモの、これまでに見たこともない巨大な巣を見つけました!
オキナワトタテグモの巨大な巣の扉。土と同化していますが、わかりますでしょうか?扉の直径は31mmもありました!ちなみに百円玉ぐらいの直径が、よく見かける大きな扉です。
目を疑う巨大さに、一人で大きな声を何回も出してしまいました。。
発見時、この巣穴の主も、他のキムラグモ類などと同様に半開きの扉から脚を出していたのですが、あまりの大きさに圧倒されてカメラの準備に後れを取っているうちに、こちらの気配を察知したようで、いつの間にか引っ込んでしまっていました。
成長が遅いとされるこのクモが、これぐらいの大きさになるには、一体何年かかったのでしょうか。
穴を掘り崩して、中のクモを見てみたい気にかられましたが、そう考えると興味本位だけでは手がでませんでした。

扉の中はこんな感じ。きめ細かな糸で裏打ちされている。
そして、もっとも胸が高鳴ったのは、巣穴の大きさではなくて、予想もしていなかった瞬間におこりました。
ひととおり外観を観察して、扉の中も覗いてみようかと指で扉を押し上げて覗いて、トンネルの大きさにまたびっくりして、ひととおり眺めて写真撮って、指を扉から離して扉が閉じたとき、『パタン』って音が鳴りました。
ん??ってなって、もう一回指で開いて放してみました。
『パタン』って、ちゃんと鳴りました!
あまりに大きい巣の扉だから、閉じたとき、もう『パタン』って音が鳴るんです!
やばい、愛いすぎる。ってことは?半開きの穴から脚引っ込めたとき、もしかして自力で『パタン』って鳴ってたのか?
聴きた過ぎる!!
音が聴こえるほど巨大であり、扉を閉じる音という生活音?をこんなつつましく生きているクモが人知れず出している(かも)、ということが、なんとも感動してキュンとしてしまったのでした。
それから、パタンの音が聴きたくて、どうにか、脚が再び扉から出てこないかと、数時間空けて2回通ったのですが、脚が出ることはありませんでした。
念のため、翌日の昼間にも見に行ったのですが、扉は閉じたままでした!残念!
いつかまたこのパタンを聴く挑戦に訪れたい。
おまけ
すてきな模様。地衣類のしわざかな?
*キムラグモ、トタテグモの仲間
大きな木がよく目につく森や、人による改変の影響があまりない良い感じの森の中や林縁で、土がむき出しになっている土手を探すと、土かべの表面に数ミリから2センチ程度の直径の丸いかたちの扉が数個から数百個見つかることがある。その扉はキムラグモやトタテグモの仲間の巣穴の入り口に設けられた扉で、土と同化していてわかりにくいが、扉をめくるとちゃんと奥に続くトンネルが開いている。これらのクモは、いわゆるクモの巣のような網を空間に張るのではなく、こうした穴を地面や倒木などに掘って普段は穴の中で暮らしている。夜になると、巣穴を半開きにして脚を出し、扉の前を通りかかる獲物となる虫やワラジムシなどを待ち構えている。クモはこうした獲物を捕らえると素早く巣穴に引っ張り込んで食べる。渡嘉敷島にはこのような巣をつくるクモとして、キムラグモの仲間ではヤンバルキムラグモとクメジマキムラグモの2種が分布するとされており、巣穴だけでは識別が困難なのでここではキムラグモ類とした。トタテグモの仲間ではオキナワトタテグモが分布する。