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アルカエの日々のこと

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2023 今年もよろしくお願いします

2023年、今年もどうぞよろしくお願いします!

年明け早々に、やんばる国頭村に家族で採蜜に行ってきました。
沖縄の冬森の味覚、フカノキ(*)のはちみつを採りに。
苦くて甘くて、一番好きなはちみつ。


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次女は大のフカノキじょーぐー(好きで目がないひと)
採蜜のあいだ、切った蜜蓋を与えたら、大興奮して食べてました!笑



ちょっとだけの収穫ですが、しばらくはトーストにかけておいしく過ごせます。


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*フカノキは、日本では九州南部から琉球にかけて自生する高木。沖縄の方言でアサグラなどと呼ばれ、晩秋から冬に咲く花からは、ほろ苦いはちみつが採れることで知られる。
深い森の中で、幹の太さ(胸高直径)が1mを超える巨木を見たときは圧倒された。


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フカノキの花(国頭村 12月)




# by archae88 | 2023-01-09 08:09 | ●はちみつのこと | Comments(0)

今年もツルヒヨドリの花の時期

11月、毎年この時期になると、あちこちで目につくようになる植物があります。
いまや悪名高い特定外来生物ともなったツルヒヨドリという植物です。



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ツルヒヨドリの花。2021年12月上旬




11月から12月にかけて、白っぽい小さな花を集合して咲かせるので、遠目にもぼわぼわしたわたのような花が目立つようになります。
(過去の記事はこちらから)

ツルヒヨドリは成長がとても早くて、つる状なのであっというまに絡みついた木々を覆っていきます。
そして、覆いつくした木々から陽の光を奪うばかりか、自らの体からほかの植物にとって害のある物質を出して、やがて弱らせてしまうことから、植物の多様性を低下させることが世界各地で警戒されています。
(環境省がまとめた情報はこちら

このツルヒヨドリ、たんぽぽと同じキク科の仲間で、たねもたんぽぽみたいに綿毛に乗せて飛ばします。
そのせいもあって、いつの間にか自宅の庭にツルヒヨドリが生えていることがよくあります。



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たんぽぽの花みたいに、フワフワしたたねをつける。2021年1月中旬




野外で増えてしまったツルヒヨドリを取り除くのは難しいことですが、自分の庭に生えている株を抜き取ることはできます。
それぞれのご家庭で、これをやればかなり効果的な防除だと思います。
そのタイミングが、種を付ける前のまさに今、10月~11月です。

特定外来生物は、外来生物法で指定されている生きものなので、抜き取るあるいは刈り取って触ることもいけないのではないかと思っている方もいるかもれません。
でも、自分の庭(所有地)に生えている特定外来種であるツルヒヨドリを抜き取って、燃えるごみとして市町村指定袋に入れて燃えるごみの日にごみ捨て場に出す行為は、違法ではありません。
むしろ、ツルヒヨドリが自宅の庭に生えていることを知りながら放置すると、『保管』という違反に抵触する可能性があるようです。

普段何気なく見ている庭の植物の中に、ちょうど今時期、小さな白っぽいつぼみをたくさん付けた、植えた覚えのないつる植物は生えていないでしょうか。
この機会に是非、ご自宅の庭のツルヒヨドリを確認してみてください。

燃えるごみというのも少し残酷な気がしますが、切ったツルヒヨドリは土の上に置いておくとその部分から根が出てきて余計に増えてしまいますから、やるからにはちゃんと処分することが肝要です。



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虫からの人気は上々。2021年12月上旬




ツルヒヨドリの花、みつばちたちは結構お気に入りの様子で、見るとだいたい来ています。
どんな味なのかしら。



# by archae88 | 2022-11-05 14:17 | ●生きもの | Comments(0)

生きている昆虫図鑑!

6月23日に、学研からものすごい昆虫の図鑑が発売されます。

場違いながらも、撮影チームの一員として僕もお手伝いさせていただき、いくつかの沖縄の昆虫を撮影してきたこの1年間でしたが、ついにその日を迎えようとしています。

発売に先駆けて、見本誌が届きました!
梅雨の居座る沖縄の窓を開けて、図鑑を眺めてみました。

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ずしっと分厚い!



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僕が子どものころ使っていた図鑑(右)と。こちらは小学館のもの。



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(子どものころのやつ、クワガタのページをいつか失くしたのが心の痛み)



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時の流れを感じます。今回の新刊もこれぐらいなるまで使います。




すでに話題になっている図鑑なので知っている方もいるかもしれませんが、この図鑑、なんと収録されている約2800種(!)が全て『生きた状態』で撮影されています!

こんな図鑑は、学習図鑑じゃなくてもほかにありません。
実際にやらせてもらってみてわかったのですが、散々動き回る虫を光をまわして所定の角度できれいに撮る、というのはかなり大変なことで、これを収録されている分類群の全種でやったことになります。
かなりとんでもないことだと思います。

出張から帰ってきて、ついに中身を見たのですが。。
だいぶ、すごいことになっていました!!

生きている虫は、面を上げて、瑞々しい眼を行先に向けます。
生きているからこその色味と、命を感じさせる体勢が相まって、すべての個体に表情があって意思を感じるのです!
それは、普段野外で実際に目にしている昆虫たちの姿そのものなんですが、それが図鑑の中で起きている。。。!

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詳しくはお見せできませんが中身はこのような感じです!
生きた状態で図鑑に載ること自体がまれな種も少なくありません。





夜中に、今回の図鑑の旧版と見比べて、妻とはしゃいでしまいました。。!
これまでの図鑑とはまったく違う。
想像していたよりも、感動してしまいました。

撮影、執筆、本の制作をされている方々は、一流の昆虫学者や虫屋さん、写真家、仕掛け人の方ばっかりです。
僕なんて微々たるものですが、そんな人たちと一緒に仕事をさせていただいたことは、本当に名誉なことであり、最高の経験となりました。

この図鑑から入る今の小さな子どもたち(学研ネイティブ)は、どんな感覚で虫と向き合っていくのでしょうか。
いつの日か、なんらかの形でこの図鑑を超える図鑑を作るのでしょうか。長生きしたいものです!
感動と発見の詰まったこの図鑑、是非、ご家族でご覧になってみてくださいね!

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【採集・生体提供】の欄に娘の名前も入れていただきました。素早くて、僕が採れなかったトビイロヤンマを、石川五ェ門のような網さばきで娘が採ってくれたのでした!







発売日となる6月23日は、沖縄の慰霊の日です。
77年の月日が流れて、子どもたちが虫採りを楽しめる沖縄になりました。
それどころではなかった子どもたちがたくさんいたでしょう。
子を持つ親になって、我が子に思いを重ねると、胸が苦しいです。
しっかり生きないとね。

それにしても、昔の沖縄はどんな昆虫相だったのか、気になります。
オオサシガメは普通に採れたのか、あの洞窟は改変前で健全か、やんばるはどうだろう。

図鑑を片手に、ふといろいろと思います。





# by archae88 | 2022-06-17 18:04 | ●お知らせ | Comments(0)

2022 今年もよろしくお願いします

明けましておめでとうございます!
2022年も、どうぞよろしくお願いいたします!
新年早々ですが、1月9日(日)QAB 13:25 - 13:55 放送の『リア突WEST』石垣島ロケにて、ジャニーズWESTさんを案内してきましたので、よかったら見てくださいね~!
どんな仕上がりになっているのか、楽しみ?です。。

終始楽しいロケでした。ある意味こういうロケがいつまでもできるぐらいに、みんなで良い自然をのこしていかんとなー、なんてロケ中もひっそり燃えていました。
少しでも虫好きが増えるきっかけになればと思うばかりです!

写真は、ロケでも行った於茂登岳の山頂で以前見つけたオカヤドカリです。
於茂登岳は沖縄県最高峰の山で526mあります。
こやつはこんな小さい体でえっちらおっちらと、どれぐらいの時間をかけたのか、どこでイッシキマイマイの殻に着替えたのか、海からここへ登ってきたことになります。
なので、巨大な人間であられるジャニーズのお二人には、少しきびしい案内をしております、笑


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海から山頂までの道中を想像したら、なんとも胸熱な!覗いてみたい。。




# by archae88 | 2022-01-04 10:53 | ●お知らせ | Comments(0)

ガマアシナガアリのこと。

2017年の夏の終わり、

仕事で泊まっていた宿で、ベランダの椅子に座って、アリの画像を見ていた。


そのアリがガマアシナガアリと呼ばれるのはもっと後で、この時はとにかく、毎日胸が苦しかった。

あまりにもすごい虫を見つけてしまったのではないかと、全身ぶるっていたのだ。

一方で、その代償で、この身になにか不吉なことが起きるのではないかと、ガチ目に心配していた。


赤と黒みたいなものが渦巻いて、胸がもう痛かった。

まさに恋心。携帯を握りっぱなしの浮つく乙女。

出会ってしまった彼女たちに、後には引き返せない運命を感じて戦慄していた。


この虫をどうしたいのか。人生で一番何かをまじめに考えた。

そんな出会いだった。



ガマアシナガアリのこと。_a0247891_00365345.jpg


アリを見つけたのは洞窟の中だった。


その頃、飼っていた別のとても良い虫をうっかり変な場所に容器ごと置き忘れてしまい、朝陽に当てて熱死させてしまっていた。

そのことを少しでも忘れたくて、洞窟に出会いを求めていた。

ちょうど洞窟の先輩が誘ってくれて、そういう流れだった。


かねてから探していた洞窟性のサシガメを、ここぞとばかりに血眼になって探した。


粛々と探索が続いたあと、ふと、アリが目に入った。

洞窟にアリがいること自体はそんなに珍しいことではない。それまでも何回か見つけていた。

ただ、そういったアリは例外なく『迷洞窟性』という、たまたま洞窟に入り込んでしまった本来地上に棲むアリだった。

今回のアリもそうだろうと、その時は思っていた。


でも、今まで洞窟の中で見つけていたのは大体ハリアリ亜科の種だったことを思い出した。

アシナガアリ属はこれまで洞窟の中で見たことがなかった。

とにかく吸虫管で吸って採集した。


それにしても体色が淡すぎるなと、思った。一見、眼がないように思えるぐらい、眼が小さかった。


自分が何を採ったのか、よくわからなかった。

たまたま色の薄い集団か?いや、眼が。


一緒に洞窟に入っていた先輩に、こんなアリがいたと報告したが、大したリアクションはなかった。

自分自身もそんな感じだった。

だけど胸騒ぎがした。これまでのアリとは違いすぎる。洞窟性のやつなのか?



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吸虫管の中のガマアシナガアリ。

*画像の個体は、発見当時、新種記載の研究に用いる目的で最小限採集したものです。

*現在は種の保存法により採集が禁止されています。



その後、結局サシガメは見つからず、洞窟を後にしたが、そのころにはもうアリのことで頭がいっぱいで、正直それどころではなかった。


帰宅し、洞窟のアリについてウェブで情報をあたってみた。


その胸騒ぎがピークに達したころ、『cave ant』のページにたどり着いた。

英語だったが、翻訳にかけてみて驚いた。

そこには、世界でたった1例のみという真洞窟性のアリの存在が紹介されていて、新種として記載された論文へのリンクが貼られていた。

真洞窟性種とは、一生涯を洞窟の中で過ごす、洞窟に依存して生活する種のことだ。


論文に図示されていたそのアリの姿(画)を見て、アッとした。

今回のアリととてもよく似ている!


ラオスから発見されたというそのアリは、ハシリハリアリの仲間で、今回のアリとは別種なのはわかったが、その小さな眼、長い触角と脚、全体のひょろっとした比率がそっくりに見えた。


そして、アリで洞窟性の種がなぜ存在しにくいかの議論も紹介されていた。

光の入らない洞窟は、生きものが暮らすにはそもそも厳しい環境であり、食べ物も乏しい。


そんな中でも、世界中で見ると、ゴミムシやエビ、魚、イモリなどわずかながら洞窟に適応し得た動物は存在する。


ただ、アリのように集団で暮らす社会性の昆虫にとっては、餌の要求量の大きさなども相まって一層厳しいのではないかと議論されていた。


これまで、世界で見つかっている真洞窟性の可能性のあったアリは、調査が進むにつれ洞窟以外の場所でも見つかり、真洞窟性のアリの存在については立証できずにいたようだ。

そんな中、ラオスから真洞窟性の可能性が高いアリが見つかり、世界でたった1例の稀有な存在として知られることになった。


…まさか、今回のアリは世界で2例目なのか。

こんな沖縄で?いや、沖縄だからか。

これは、とんでもないものを見つけてしまったのかもしれない。


それから、このアリについて自分はどうしたいか、悩んだ。

率直にどうしたいか書き出したりもした。

僕はアマチュアの一虫屋にすぎないが、あろうことか、恐れ多くも、『この手でこのアリを新種記載したい』と思ってしまった。


出張先のベランダでは、そういったことばかり考えてはため息を漏らす、乙女的おじさんになっていた。




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リュウキュウアシナガアリは普通に地上に見られる種。



それから、洞窟の周辺でアシナガアリがいそうなところを念入りに探してみたが、普通種のリュウキュウアシナガアリが見られただけだった。


やっぱりこのアリは洞窟の中にしかいない。それもバットグアノ(洞窟性小型コウモリの糞)の堆積している場所にしかいない。

いよいよ『世界で2例目』がちらついてきたころ、足に腫瘍が見つかった。


足によくわからない激痛が走り、病院で見てもらったところそうなった。

おそらく、この虫を見つけてしまった代償だろう。

あまりにできすぎたタイミングが、やはりこの虫は良い虫なんだと、確信させた。

本当にただではすまなかった。


いろいろ思いもあったが、もしこういう選択を迫られているとしたらどうだろう、と考えた。


・どなたか、記載に向けて力を貸してくださる先生がいて、このアリを記載することができる。ただし、最悪その後死ぬ。死なないまでも、今後これまでのようには生活が送れないし虫採りができなくなる


あるいは、


・だれかが記載してしまう。その後…元気?


どうだろう。どっちがいいか?


しばらく毎日、仕事で山を歩いていても、人と打ち合わせをしていても、ずっと考えていた。

ある日、夜中に一人で砂浜を歩いていた時、急に結論が出た。

「まだ生きていたい!」

でもアリの記載は諦めたくない!と、すぐ思い返すのだけれど、それが答えのようだった。


楽しくしている娘や、足を案じて「山に引っ張って行ってでも虫採りさせてあげる」と言ってくれた妻のことを思い出すと、『ここで死ぬわけにはいかない』と、それしか出なかった。


結論は出たが、生きていられるかどうかは当然その後の次第による。


ある日の診察で、事前に腫瘍の一部を摘出して検査していた結果が出た。

結果、足に見つかったそれは腫瘍ではなく、足の骨の一部の成長異常であることがわかった。


つまり癌ではなかった。

あまりのことにしばらく動転したが、嬉しくて、診察に行ったその足で家族で居酒屋でお祝いをした。


そうして、かねてよりお世話になっている先生に縁を繋いでいただき、九州大学の丸山宗利先生にご指導を賜ることになり、先生のお力添えによって、記載論文を仕上げるに至った。


つまり、この上ない最高のかたちで夢が叶ったのだ。

こんなことが、あるんですね?(いまだにこの件は夢のようで放心)


まず先生方、それから、いろんなことに理解を示してくれた妻と家族には、心から感謝の気持ちしかない。



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よく見ると、個体によって体の色やお腹に透けて見える素嚢(そのう、胃の一部)の状態が微妙に異なる。

*画像の個体は、発見当時、新種記載の研究に用いる目的で最小限採集したものです。

*現在は種の保存法により採集が禁止されています。



ところで、このアリは本当に良い虫だ。

いつから、なんで、どうやってそこで暮らしているの?

教えてくれよ。

その小さな眼、長い触角、抜けた体色。

当たり前のように、コウモリの糞をくわえて運んでさ。

変わり果てたその姿が、生き延びようと必死だった証拠だよね。

お前は美しいね。

お前の存在そのものが、命の力強さを表しているね。

恐れ入るよ。


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さて、出会いからもう何年も経っている。

今は関係機関と連携して、このアリの保護目的の調査を続けている。


保護の地盤が整うまでは、アリへの愛は胸の内にだけとしていたけれど、関係者間の熱い協同により、ようやく整いつつあるので、これからは漏れてもいいよね。


この先、一生をかけて、この虫のことを知りたい。

この虫の存在を脅かすものがあれば、全力で鉄槌を見舞いたい。


この出会いは間違いなく間違いではない。



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研究のためにお邪魔させていただいた九州大学にて。松葉杖がとれるのを見計らって家族全員で福岡へ飛んだ。この時の気持ちは一生忘れないだろう。




# by archae88 | 2021-09-11 10:45 | ●虫 | Comments(0)